主要ポイント

  • 人手不足と労働市場の逼迫さ:2024年も引き続き人手不足ではあるが、情報サービスやインバウンドの消費需要に関連する産業、2024年問題に関連する産業にて労働需給に更に動きがでやすいだろう。
  • シニア世代・女性・外国人労働者による労働供給::シニア世代は、求職意欲の高い最大の潜在的グループである。女性の労働供給は着実に増加しているが、さらなる拡大には課題がある。外国人労働者の参加は大きな可能性を秘めているが、国際的な人材獲得競争において日本は遅れをとっており、女性やシニア世代の労働参加に比べると相対的に進みにくい可能性が高い。
  • 転職の増加の可能性:転職希望者は増加しており、労働市場は徐々に流動化している。Indeed上で観測される「シニア」の求職関心、「リモートワーク」への関心、より高い「賃金」への関心、ソフトウェア開発職等に対する「異職種」からの関心、この4つの関心の高まりは今後の転職希望者の増加を左右する重要な要素である。しかし関心があっても年齢や経験の制約等により転職の大幅な増加に結びついていないことも確認されている。2024年に、リスキリング等を通じて、そうした問題が緩和されれば、全体的に転職がさらに増えるだろう。
  • 賃金の伸び:2023年9月の名目賃金上昇率は1%以下で、春闘の結果が反映されやすかった5月から徐々に鈍化傾向である。通年行われる転職で賃金交渉が他国ほど進んでいない状況も一因であり、今後は転職時の賃金交渉によって外部労働市場が変化することが、内部労働市場の賃金増加につながる鍵となる。
  • 生成AIの影響:生成AIやその他のテクノロジーの利用が増えれば、それらのツールを開発する仕事が増えるだけでなく、量(需給)・質(働き方等)の両面で、労働市場に広範囲に影響する可能性がある。

2024年も人手不足は続くが、より動きがでやすい産業には注目

2023年第3四半期(7-9月)時点で、公表されている産業区分全てで雇用人員判断DIはマイナスを記録しています。すなわち雇用人員不足の回答が人員過剰の回答を上回っており、今後も人手不足は続いていくと考えるのが自然です。製造業は2023年には人手不足の緩和も見えましたが、非製造業ではさらに人手不足となっています。

日本銀行の短観より、企業の従業員に対する過不足感の回答(期間:2008Q1-2022Q3)を示したもの。値がプラスの場合は人員過剰気味、マイナスの場合は人員不足気味であることを表す。青色、赤色、黄色の線はそれぞれ、全産業、製造業、非製造業の回答を表す。灰色領域は景気後退期を表す
雇用人員判断DI:日本銀行の短観より、企業の従業員に対する過不足感の回答(期間:2008Q1-2022Q3)を示したもの。値がプラスの場合は人員過剰気味、マイナスの場合は人員不足気味であることを表す。青色、赤色、黄色の線はそれぞれ、全産業、製造業、非製造業の回答を表す。灰色領域は景気後退期を表す。

2023年第3四半期(7月〜9月)で人手不足が最も深刻な産業は「宿泊・飲食」(-72ポイント)、「建設」(-54ポイント)、介護事業などを含む「対個人サービス」(-51ポイント)、ソフトウェア業などを含む「情報サービス」(-49ポイント)、「運輸」(-48ポイント)でした。

これら人手不足が深刻な産業においては、確かに労働力人口減少に伴う慢性的な人手不足の側面もある一方で、2024年には更に動きがでやすい、すなわち労働市場がタイトになりやすい可能性があるため注視する必要があります。「建設」や「運輸」は、いわゆる「2024年問題」によって、雇用の流動化に影響が生じてくると考えられます。「宿泊・飲食」においては、更なるインバウンドの消費需要が見込まれるため、更に労働需要が上昇する可能性が高いでしょう。「情報サービス」については、足元ではIT産業に対する求職者の関心が増えているため、今後の「情報サービス」の求職者と採用マッチングの状況によっては人手不足が緩和する可能性もあります。

産業別の雇用人員判断DIで最も負の絶対値が大きい5産業を記載したもの。産業区分は日本銀行の短観業種区分の定義に基づく。対個人サービスは、老人福祉・介護事業や学習塾、美容業等を含む。情報サービスはソフトウェア業や情報処理・提供サービス業などを含む。
産業別の雇用人員判断DIで最も負の絶対値が大きい5産業を記載したもの。産業区分は日本銀行の短観業種区分の定義に基づく。対個人サービスは、老人福祉・介護事業や学習塾、美容業等を含む。情報サービスはソフトウェア業や情報処理・提供サービス業などを含む。

追加的な労働供給の見込み – シニア世代・女性・外国人労働者

人手不足ではあれ、まだ十分に活用しきれていない労働力も存在します。具体的にはシニア世代、女性、外国人労働者の3つの層には追加的労働供給の余地があります。

この3つの層のうち、潜在的な供給規模と供給増の可能性が高い層はシニア世代です。就業率の上昇トレンドと将来の上昇余地がまだ多く残されているだけでなく、求職への関心が高い(次節参照)ことが確認されるからです。

女性の労働参加は年々着実に伸びてきました。しかし最大で就業可能な割合(以降、「潜在的な就業率」と呼ぶ。)を試算すると、20年前や10年前に比べて追加的に就業可能な余地(潜在的な就業率と実際の就業率との差)は限られてきていることがわかります。従って、今後数年間はまだ女性の労働供給の伸びは期待できるものの、さらなる拡大には課題があると考えられます。

外国人労働者については、日本での就業を選択した場合の潜在的な規模は大きい一方で、供給増の可能性については現状の受入れ制度のままでは十分期待することが難しいと考えられます。国際的な人材獲得競争において、日本は諸外国と比べて、海外からの就業への関心を得ることに遅れをとっていることが確認されているためです。

上図表は、シニア世代の就業率について、年齢階級別(65-69歳、70-74歳、75歳以上)に示したもの。下図表は女性の生産年齢人口(15-64歳)における潜在就業率と就業率の推移を示したもの。潜在就業率は就業者と非労働力人口の就業希望者の合計。
上図表は、シニア世代の就業率について、年齢階級別(65-69歳、70-74歳、75歳以上)に示したもの。下図表は女性の生産年齢人口(15-64歳)における潜在就業率と就業率の推移を示したもの。潜在就業率は就業者と非労働力人口の就業希望者の合計。

転職市場のさらなる活発化には、「シニア」「リモートワーク」「賃金」「異職種」に対する取り組みが鍵

転職希望者は年々増加し、最新の2023年第3四半期(7月~9月平均)はついに1000万人を超えました。これは就業者の15%、すなわち就業者の約6人に1人が転職を希望していることとなります。一方で、実際に転職した人数は325万人であり、パンデミックが深刻となった2020年や2021年と比べて直近は微増傾向ですが、未だほぼ横ばいです。

労働力調査の転職等希望者数と転職者数の推移を2013年から2023年の最新である第3四半期(7月-9月平均)まで示したもの。2022年までは年平均、2023年からは四半期平均を掲載。転職等希望者は「現在の仕事を辞め仕事を変えたい」または「現在の仕事のほかに別の仕事もしたい」ことを希望している人を表す。転職者は「就業者のうち前職があり、過去1年間に離職の経験がある」人を表す。
労働力調査の転職等希望者数と転職者数の推移を2013年から2023年の最新である第3四半期(7月-9月平均)まで示したもの。2022年までは年平均、2023年からは四半期平均を掲載。転職等希望者は「現在の仕事を辞め仕事を変えたい」または「現在の仕事のほかに別の仕事もしたい」ことを希望している人を表す。転職者は「就業者のうち前職があり、過去1年間に離職の経験がある」人を表す

今後の転職希望者数と転職者数の見込みを考えるには、現在までのそれぞれの変化の背景だけでなく、今後の転職希望者数と転職者数に影響を与えるものを紐解くことが重要です。Indeedの求人検索データや求人クリックデータは、求職者が何を希望しているのかを示す先行指標であり、その意味で今後の転職希望者数の動向に示唆を与えます。

ここでは、少なくとも今後も影響を与える蓋然性が高い4点について記載します。

1. シニア

1つ目はシニア世代の転職希望の増加です。性年代といったデモグラフィックな要因とその構成比は全体の労働市場に影響を与えますが、中でもシニアの影響は強いと言えます。総務省「労働力調査」によると、転職希望者数全体に占める55歳以上の希望者の割合は、10年前の15.8%から18.7%(2023年第3四半期)に増加しています。すなわち転職希望者数全体の増加スピード以上に55歳以上の転職希望者数の増加スピードは早い傾向にあります。また今後もシニアの転職希望は増えそうかを見るため、求職者の仕事への関心の指標となるIndeedの検索トレンドを見ると、シニアに関するキーワードで検索した場合は全体の検索数の約2%を占め、上昇傾向であることがわかります。このことは、シニアの転職希望の増加の確度はとても高いことを示します。

左図表は、労働力調査より転職等希望者数に占める55歳以上の割合の推移を示したもの。右図表は、Indeedの仕事検索において、検索数全体のうち、シニア関連のキーワードで検索した割合を示す。データは月次3ヶ月移動平均。シニア関連のキーワードは、「60歳/60代」「65歳」「70歳/70代」「シニア」のキーワードを含む。
左図表は、労働力調査より転職等希望者数に占める55歳以上の割合の推移を示したもの。右図表は、Indeedの仕事検索において、検索数全体のうち、シニア関連のキーワードで検索した割合を示す。データは月次3ヶ月移動平均。シニア関連のキーワードは、「60歳/60代」「65歳」「70歳/70代」「シニア」のキーワードを含む。

他方で、実際の転職となると、求職者が年齢に不安を抱えていることも事実です。Indeed及びリクルートで共同実施したグローバル転職実態調査によると、「今後転職活動をする際に制約となるもの」に対して、日本では年齢に関する制約が最も多く選択されており、諸外国の傾向と異なります。そして年齢に関する制約は、性別・年代問わず多く回答されているため、回答者の年齢が高いことによる回答バイアスがこの結果に影響を与えているというわけではないのです。

Indeed及びリクルートで2023年10月に共同で実施した「グローバル転職実態調査」の中で、質問「今後、転職活動をする際に、何が制約になると思いますか?(いくつでも)※転職を考えていない方は、転職する事を想定してお答えください。」に対する回答結果を図示したもの。なお複数選択の設問により、割合は回答者数ベースで算出。「グローバル転職実態調査」の詳細については方法を参照。
Indeed及びリクルートで2023年10月に共同で実施した「グローバル転職実態調査」の中で、質問「今後、転職活動をする際に、何が制約になると思いますか?(いくつでも)※転職を考えていない方は、転職する事を想定してお答えください。」に対する回答結果を図示したもの。なお複数選択の設問により、割合は回答者数ベースで算出。「グローバル転職実態調査」の詳細については方法を参照。
2. リモートワーク

2つ目はリモートワークへの関心です。Indeedの検索キーワードでは、シニアと同様に検索数の2%超を占め、決して無視できない割合であるだけでなく、一貫して上昇傾向にあります。多くの求職者が、関心のある仕事内容や職種、雇用形態をキーワードに入力する傾向がある中で、全検索の2%超を占めるということは、求職者にとってリモートワークという働き方が、仕事を選ぶうえでの重要な条件のひとつとなっており、それが定着しつつあることを示しています。

2019年1月から2023年11月までのリモートワーク関連の求人検索割合を示したもの。灰色は緊急事態宣言の期間を示す。求人検索のデータはIndeedから、緊急事態宣言の期間の情報については内閣官房のホームページから取得。
2019年1月から2023年11月までのリモートワーク関連の求人検索割合を示したもの。灰色は緊急事態宣言の期間を示す。求人検索のデータはIndeedから、緊急事態宣言の期間の情報については内閣官房のホームページから取得。
3. 賃金

3つ目はより高い賃金への関心です。インフレーションに伴い、求職者がより高い賃金を希望するようになってきていることが、Indeedの求人検索データから読み取ることができます。時給に関するキーワード検索では、2022年に引き続き、2023年も1,500円や2,000円の検索が1,000円を上回り、差が広がっています。同様に、月給については40万円が20万円の検索を上回り、全体的には従前より高い賃金を検索することが増えてきていると言えます。

賃金関連の求人検索割合の推移を示したもの。データ期間は2019年1月から2023年11月まで。時給検索においては、1,000円、1,500円、2,000円検索の割合を記載。月給検索においては、20万円、30万円、40万円、50万円検索の割合を記載。
賃金関連の求人検索割合の推移を示したもの。データ期間は2019年1月から2023年11月まで。時給検索においては、1,000円、1,500円、2,000円検索の割合を記載。月給検索においては、20万円、30万円、40万円、50万円検索の割合を記載。
4. 異職種

仕事内容も転職活動に影響します。その中で、異職種への関心が増加し、異職種転職希望者が増える一方で、実際の異職種への転職はまだ十分にその希望に追いつけていない可能性があります。Indeed履歴書の登録データと求人クリックデータの分析によると、各職種へのクリックの割合は基本的に同職種からの割合が多いことが確認されますが、一方で職種カテゴリの中には異職種からのクリック割合が増加傾向にあるものもあります。その典型例に、日本では「ソフトウェア開発」が挙げられます。Indeed履歴書の登録者による「ソフトウェア開発」求人へのクリックは、2019年から2022年にかけて5.4倍に増加していますが、その増加は同職種からよりも、むしろ異職種からが寄与しています。異職種からの内訳を見ると、エンジニア業務として比較的親和性の高い製造や機械工学の職から関心もありますが、「小売り」「事務」「営業」などからも大きく関心が集まっています。昨今のDX化やITへの関心の高まりが求職行動にも影響していると考えられる一方で、志望職種とスキルや経験との乖離がもし大きいとなれば、実際に転職することは難しくなります。

この観点では、リスキリングなどの取り組みが重要であり、リスキリング次第では、現在よりも異職種への転職が増える可能性があります。

左図表は、ソフトウェア開発の求人へのクリック数について、2019年を1として2022年までのトレンドを、同職種(ソフトウェア開発)からのクリックと異職種(ソフトウェア開発以外)からのクリックに分解して示したもの。
左図表は、ソフトウェア開発の求人へのクリック数について、2019年を1として2022年までのトレンドを、同職種(ソフトウェア開発)からのクリックと異職種(ソフトウェア開発以外)からのクリックに分解して示したもの。

右図表は、ソフトウェア開発求人へのクリックを、さらに求職者の現職の職種カテゴリ別で示したもの。左図表と同様、2019年のソフトウェア開発の求人へのクリック数全体を1と基準化した場合の値で記載。職種カテゴリは2022年時点で基準化された値が大きい順に上位10職種カテゴリを掲載。最上位の「ソフトウェア開発」は、すなわち同職種からのクリックを意味する。

賃金の伸びは春闘の結果が反映されやすかった5月から徐々に鈍化。ベースの賃金上昇率が0%に回帰せず、賃金交渉や賃上げ機会がより広範囲に、より持続的に行き渡ることが望まれる。

2023年の賃金上昇率は5月にピーク(現金給与総額 +2.9%、きまって支給する給与 + 1.6%、所定内給与 +1.7%)となりました。これは例年よりも賃上げムード及び春闘が活発となり新年度のタイミングで反映されやすかったためです。しかし、5月以降は鈍化傾向で、2023年9月の名目賃金上昇率は1%以下を記録しています。ただし、ベース給(「所定内給与」)の上昇率については、2022年以前は0%前後から抜けることが難しかったのに対して、2022年からは1%前後を維持していることは好材料です。

名目賃金(現金給与総額、きまって支給する給与、所定内給与)の上昇率と消費者物価指数の推移を示したもの。現金給与総額は、「きまって支給する給与」に加えて「特別に支払われた給与」が含まれ、いわゆる主に賞与が含まれる。「所定内給与」は、「きまって支給する給与」からいわゆる残業代を引いたベース給与を意味する。消費者物価指数は、総務省で公表している消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)の前年(同月)比を記載。
名目賃金(現金給与総額、きまって支給する給与、所定内給与)の上昇率と消費者物価指数の推移を示したもの。現金給与総額は、「きまって支給する給与」に加えて「特別に支払われた給与」が含まれ、いわゆる主に賞与が含まれる。「所定内給与」は、「きまって支給する給与」からいわゆる残業代を引いたベース給与を意味する。消費者物価指数は、総務省で公表している消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)の前年(同月)比を記載。

この傾向を見ると、日本で賃金が上昇するためには、2つの課題が浮上します。1つは上昇率の大きさ自体が決して大きくはないこと、もう1つは鈍化傾向にあるということです。

1つ目の上昇率の大きさに関する課題については、春季賃上げが観測される民間主要企業の状況とその他の企業に賃上げの差異があることも原因となります。

民間主要企業(資本金10億円以上かつ従業員1,000人以上の労働組合のある企業のうち妥結額等を観測できた企業、2023年は364社)に限ると、春季の妥結賃金上昇率は、2023年は平均で3.6%と、例年の2%前後に比べて著しく上昇しました。2023年の賃上げ機運の全体的な高まりもあって、確かに主要企業では労働者が期待する結果を一定程度もたらしています。しかし、労働市場全体のピーク時の名目賃金上昇率(現金給与総額 +2.9%、きまって支給する給与 + 1.6%、所定内給与 +1.7%、調査対象事業所:約33,000事業所)との乖離を踏まえると、民間主要企業の賃上げの労働市場全体への影響としては非常に強いというわけではなさそうです。従って主要企業以外の企業でも賃金上昇となるかが今後の焦点となります。

2つ目の鈍化傾向に関する課題については、賃金の見直し機会の頻度が少ないことが影響しています。内部労働市場での賃金の見直し機会が少ない可能性に加え、外部労働市場では転職回数や転職時の賃金見直しがまだ発展途上にあると考えられるためです。

加えて、外部労働市場からの影響としては、転職時に賃金の交渉が十分行われていないことも、賃金が十分に上がらない原因の1つとなりえます。Indeedとリクルートで実施したグローバル転職実態調査において、フルタイム勤務で2年以内に転職を経験した回答者のうち、日本では30%しか「転職の入社時に、自ら希望額を伝えた」と回答した人がいないのに対して、諸外国では過半数以上がそのように回答していることから、転職時の賃金の交渉に日本はまだ馴染みがないことが明らかとなっています。これが原因の全てではないにしても、結果として転職時の賃金上昇率についても、5%以上上昇したと回答した人が日本は37%であるのに対して、諸外国の大半は6割を占め、諸外国より上昇の回答割合が少ない結果となっています。

転職は通年で行われる中で、転職時の賃金交渉が円滑に進んでいけば、内部労働市場での賃金の見直し頻度についても今後変化が現れるかもしれません。

Indeed及びリクルートで2023年10月に共同で実施した「グローバル転職実態調査」の中で、質問「入社にあたって賃金はどのように決まりましたか?最も近いものを1つだけお選びください。」「転職によって年収は変わりましたか?」に対する回答結果を図示したもの。「グローバル転職実態調査」の詳細については方法を参照。
Indeed及びリクルートで2023年10月に共同で実施した「グローバル転職実態調査」の中で、質問「入社にあたって賃金はどのように決まりましたか?最も近いものを1つだけお選びください。」「転職によって年収は変わりましたか?」に対する回答結果を図示したもの。「グローバル転職実態調査」の詳細については方法を参照。

最後に、インフレーションと労働市場の賃金上昇率の先行きは、今後の中央銀行の金融政策に左右されます。欧米諸国では利上げを進める中、これまで金融緩和を維持してきた日本銀行の金融政策が大きな転換点を迎えてきており、2024年の政策動向をより注視する必要があります。

生成AIを開発する仕事ではなく、活用する仕事に注目

2024年以降の労働市場を考えるにあたって、生成AIの影響を無視することはできません。

2022年末から人々はこの新たな革新的なテクノロジーを意識し始めるようになりました。このテクノロジーは、様々な仕事を再構成し、さらに多くの新しい仕事を生み出す可能性があります。生成AIの影響は仕事の広範囲に及びますが、ソフトウェア開発など生成AIによる影響を大きく受ける職種もあれば、ドライバーなど直接的な影響をまだ受けづらい職種もあり、影響の多寡には職種間でばらつきがあることが確認されています。

生成AIの仕事への長期的な影響については引き続き注視していく必要がありますが、この分野に関連する仕事が急増していることははっきりしています。これには生成AIの開発に携わるような仕事の求人だけでなく、その職務が生成AIを活用するかどうかに言及している求人も入ります。Webデザイナーなどは典型例の1つであり、仕事の質の向上や労力の削減等で、既存の仕事に生成AIを活用することになります。仕事の質の向上や労力削減等を視野に生成AIを活用することは労働生産性上昇にも寄与しえます。これはパンデミック後の労働生産性の回復が遅れている日本においては特に重要なニュースなのです。

またプロンプトエンジニアなど生成AIの登場によって全く新しい職業も誕生していることが、Indeedの求人情報から確認されています。

生成AIやその他のテクノロジーの利用が増加し、それらのツールを新たに開発する仕事が増加することで、より広い労働市場が再構築される可能性があります。今後数年間は生成AIに関する仕事がまだ増加すると考えるのが自然ですが、その先の労働市場への影響は、その間の利用ニーズと利用に対応した経済成長に大きく左右されるでしょう。

方法

就業率に関する分析について、労働力人口ベースも算出したが、結果が変わらないことに加え、失業者が完全になくなることは現実的でないため、失業者を加える労働力人口ベースの結果は掲載から省略した。

年齢階級及びシニアに関する分析では、就業に関しては基本的に65歳以上を対象として分析した。他方、転職希望や関心に関する分析では、65歳より前の仕事探しの行動を追跡する方が実態にあっており、かつデータの制約に鑑み、転職希望者のシニア層は55歳以上、Indeedのシニア世代は60歳からを分析対象とした。

Indeedにおけるシニアに関する検索キーワードは「60歳/60代」「65歳」「70歳/70代」「シニア」のキーワードを対象としている。

Indeedにおけるリモートワークに関する検索キーワードは「在宅勤務」「リモートワーク」「ハイブリッドワーク」「在宅との混合」など、可能な限り、リモートワーク及びハイブリッドワークに関連する様々なキーワードを対象としている。

生成AI関連の求人の分析では、”Generative AI”、”Large Language Models”、”Chat GPT “など、生成AIの存在を示す特定のキーワードを使って、生成AIに直接関連する求人情報を抽出した。

Indeed及びリクルートで実施したグローバル転職実態調査の概要については以下の通り。

  • 調査背景:学習行動や考え方といった転職前準備と、転職時の賃金変動や満足度といった転職成果について、日本と他国の違いを明らかにし、それらの関係を分析。
  • 調査主体:株式会社リクルート及びIndeed Hiring Labにより調査設計し、インターネット調査会社を経由して調査実施。
  • 対象国・サンプルサイズ・調査時期:日本、米国、中国、フランス、ドイツ、英国、カナダ、韓国、オーストラリア、スウェーデン、インドの計11カ国。このうち、Indeedで取り扱い頻度の少ない国については本文中の掲載を割愛。国間で比較可能なものとするため、対象者条件を厳正に行っている結果、一部の国ではサンプルサイズが小さい。
対象者条件:直近2年以内に転職を経験したフルタイム勤務者。一部の業種(人材サービス、マスコミ・メディア関連業、調査業・広告代理業)を対象から除外。年代は20代から50代まで。
  • 対象者条件:直近2年以内に転職を経験したフルタイム勤務者。一部の業種(人材サービス、マスコミ・メディア関連業、調査業・広告代理業)を対象から除外。年代は20代から50代まで。